2020-01-01から1年間の記事一覧
ちょっと脱線します。 題名の「雪かき仕事」は内田樹著「村上春樹にご用心」(アルテスパブリッシング)に収められている「村上春樹とハードボイルド・イーブル・ランド」の以下の箇所(P.205)より。 雪が降ると分かるけれど、「雪かき」は誰の義務でもない…
グループ内役務提供取引を考えるに当たって、個人的によく整理ができていない問題の一つが、「本社費をどこまで個別回収すべきか?」という論点である。 ■移転価格事務運営要3-10(3)の注書きについての疑問 移転価格事務運営要領3-10(3)は、いわゆる「株主活…
役務提供取引やロイヤリティ取引を考える上で、実務上悩ましい問題の一つが、「役務提供取引、ロイヤリティ取引は棚卸取引と一体化できるのか?」という問題である。この点について、考えてみたい。 ■事案例及び論点 事案例として使用するのは、国税庁が提供…
前回の役務提供取引に引き続き、実務の基本的な勉強として、ロイヤルティ(無形資産の使用料)取引についてのメモをまとめる。もとにさせて頂いたのは前回同様、佐和周著「海外進出企業の税務調査対策チェックリスト」中央経済社と、佐和周著「海外取引の経…
実務の勉強として、知らないわけではないが、体系的には勉強してこなかったグループ内役務提供取引についてのメモをまとめる。もとにさせて頂いたのは佐和周著「海外進出企業の税務調査対策チェックリスト」中央経済社、佐和周著「海外取引の経理実務 ケース…
以下の日系企業に対する移転価格税制についてのアンケート調査結果の上位回答は、どこの国を念頭に置いた回答だと思われるだろうか。 明確な基準がないままに税務当局の判断により所得の増額更正が行われるおそれがある 商品の利益率が低い場合や欠損会社の…
森信茂樹著「デジタル経済と税」(日本経済新聞出版社)の中の、第2章「巨大プラットフォーマーと租税回避」の中の「4 アマゾンの租税回避」を題材に、少し考えてみたい。若干の苦手意識のあるPE(恒久的施設)にも関係する問題であり、まだ深くは考えられな…
以前に多国籍企業の取引コスト節約の観点から移転価格税制、とりわけ独立企業間原則について考える記事を書いたが、その後読んだ海老原宏美「独立企業原則の限界と修正ーアドビ事件を題材としてー」(2013年、「租税資料館賞受賞論文集22(中)」pp,3-105(…
今回は大沢拓・牛島慶太・平野潤一・梶巻重幸・坂本安孝編著「移転価格ローカルファイル 作成実務と実践上の留意点」(清文社)を取り上げたい。 2017年6月に国税庁は「移転価格ガイドブック」を発表しており、その中で庁はローカルファイル(LF)の具体的な…
■取引コスト 松岡真宏著「持たざる経営の虚実」(日本経済新聞出版社)において、松岡さんは「『持たざる経営』や『選択と集中』という、ある種の減量経営的なスローガン」(P.3)に対して、「経済学者のロナルド・コースの『取引コスト(Transaction cost)…
前回の記事の続きだが、別の観点から少し付け加えたい。 三品和広著「戦略不全の因果」(東洋経済新報社)の第4章「戦略の核心」は以下のような問題提起から始まる(P.102)。 企業の業績は、どのようにして決まるのであろうか。一般に企業の中では、何千人…
■ 「創って、作って、売る」と「創る」偏重 三枝匡著「V字回復の経営」(日経ビジネス人文庫)には事業の原点として「商売の基本サイクル」という概念が登場する(P.136~138)。事業の原点は「商品やサービスを顧客に買っていただくこと」であり、会社は「…
BEPS最終報告書を受けた日本の平成28年度税制改正における新しい移転価格文書の最初の提出が2018年3月以降、行われることになるタイミングである2017年12月に出版された本書では、その最初の提出に向け、各国税務当局の関心を引いてしまう「落とし穴」(P.1…
題名の通り、実務上悩ましいケースを取り上げて、それに対して回答をする、という形式で構成されている。初心者の最初の本としては難しすぎると思うが、実務上、直面する問題が多くなってきてから手にとると良さそう。自分自身の業務で直面するケースと似た…
これもカバーを紛失。 前に取り上げた『移転価格の経済分析』を「バイブル」の一つと紹介したが、続編にあたる本書も同じ。『移転価格の経済分析』と同様に、実務上の気付きが非常に多い本であったが、その中から2点のみ、取り上げたい。 ■TNMMの限界 「ポ…
これ一冊で文書化対応だけでなく、移転価格対応は十分ではないか、と思うほど、実務対応者にとってはありがたい本。書名の通り、文書化(マスターファイル、国別報告書、ローカルファイルの作成方法)がメインであり、これらの文書の作成にあたってかなり参…
カバーがなくなってしまったので、背表紙を撮影。 本書は今から10年以上前、BEPSプロジェクト以前の2008年に発行されており、その間に移転価格税制には変わったところもあるものの、依然として、実務において非常に有用な、ある意味で個人的な「バイブル」の…
移転価格税制を勉強していくとぶつかる壁の一つに、移転価格税制と国外関連者寄附金との関係の問題がある。実務上はその関係を理解する上で参照できる、唯一に近い本として重宝している。 ■移転価格税制と国外関連者寄附金の関係・違い 両者の関係・違いは、…
決して「高価」な「専門書」ではなく、移転価格税制の本ですらない。しかし、ここに書かれていることは移転価格税制の議論でも出てくる論点が多く、実務で役立つと思ったので、あえて取り上げてみたい。 例えば、以下のような点。 移転価格税制においては、…
専門書は高価である。もちろん、その本に詰まっている内容からすればそんなことはない、という見方もできるし、本の執筆者の方々からすれば書くことに費やされた時間・労力を考えれば十分に「安い」とも言えることはその通りだと思う。そもそも出版数が少な…