移転価格税制の実務研究ノート

移転価格税制の勉強の過程。実務のヒントを探しています。

検討

アドビ事件のおさらい②(リスクの負担から考えると…)

この記事の続き。 tpatsumoritaira.hatenablog.com 同じ改変事例(以下の商流図)で考える。参照文献及び文献番号も前記事を引き継ぐ。以下に再掲。 ①藤枝純・角田信広著「移転価格税制の実務詳解(第2版)」中央経済社(特にP.158~164) ②海老原宏美「独立…

移転価格はリスク負担が10割か?

「国際税務」2023年9月号におけるジョーンズデイ法律事務所 井上康一先生の「移転価格税制についての素朴な疑問23 無形資産取引について何に留意すべきか(5)」にて参照されている論文、小森敦「海外論文紹介 リスク・コントロール、DEMPE機能とR&Dサービス…

利益分割法の適用を避けるために

日系多国籍企業グループにおける大きな傾向として、海外子会社の機能が10年、20年以上前と比較して格段に強化されつつあるように感じる。これには業種、業態によって様々な要因があると思われるが、個人的には日本親会社、もっと言えば日本人社員だけでは立…

外‐外取引の拡大?

雑誌『国際税務』2023年4月号に掲載された以下論考に基づいて、考えてみたい。 Asia Wise会計事務所 税理士 高野一弘、公認会計士 山﨑耕平、弁護士 久保光太郎「バーチャル組織の実践課題 第6回(最終回)5年後の組織考察」(以下「Asia Wise論考」「当論考…

国外関連者寄附金のポイント再確認

内国法人の国外関連者間取引を検討する際に、順序としてまずは寄附金規定が優先され、寄附金に該当しないことが明らかになった後に、移転価格税制についての検討が行われることは、以下の説明や「参考事例集」で明らかである。 「条文上、国外関連取引につい…

工場・販社の無形資産とは

今村隆「移転価格税制についての最近の裁判例と諸問題ーデジタル課税における同税制の今後の役割」(『租税研究』2019年8月号、P219-246)に基づき、多国籍企業グループの製造子会社、販売子会社における無形資産について考えてみたい。 東京地裁平成29年11…

炭素税の国境調整措置と移転価格税制への波及

2021年4月29日の日本経済新聞に「脱炭素『国境調整』の行方は」と題した記事(記事①)が掲載されたり、同紙5月4日「ニュースがわかる」では「加速する脱炭素 排出量取引の機運」という解説記事(記事②)が載るなど、カーボンプライシングを巡る議論が活発化…

「変動ロイヤリティ」と価格調整金の交錯

国税庁「別冊 移転価格税制の適用に当たっての参考事例集」(以下「参考事例集」)の以下2つの事例が「交錯する」ところを検討してみたい。(といっても、答えには辿り着けず。以下ページ数は「参考事例集」のページ番号である。) 【事例6】(取引単位営業…

本社費の個別回収

グループ内役務提供取引を考えるに当たって、個人的によく整理ができていない問題の一つが、「本社費をどこまで個別回収すべきか?」という論点である。 ■移転価格事務運営要3-10(3)の注書きについての疑問 移転価格事務運営要領3-10(3)は、いわゆる「株主活…

取引単位のもやもや

役務提供取引やロイヤリティ取引を考える上で、実務上悩ましい問題の一つが、「役務提供取引、ロイヤリティ取引は棚卸取引と一体化できるのか?」という問題である。この点について、考えてみたい。 ■事案例及び論点 事案例として使用するのは、国税庁が提供…