菖蒲 静夫「税務担当奮闘記 —企業税務の心得と体制強化」中央経済社を拝読。
アマゾンでは「キヤノンの経理部門で44年弱、そのうち約40年を税務担当として働いてきた「企業税務の実務家」が語る「現場での生きた経営税務」。税務の考え方、向き合い方、勉強の仕方などがわかる。」と紹介されている。
移転価格についての本ではないが、広く企業内における税務専門家の心構えとやるべきことがご経験をもとに説明されており、大変参考になった。
以下は特に参考になった5点。折に触れて読み返したい。
- 収事務代行型税務”から”経営意思決定サポート型税務”への脱皮」(P.18)
- 「税務担当=全部担当」(P.43)
- 「事業部門等関係部門からの税務相談・質疑応答を通じた鍛錬」(P.80)こそが「会社に属する社員として税務実務に精通する」(P.86)ためには重要。
- 「…この仕事が最も税務担当としての知識・能力・スキルアップに、そして社内関係者との人脈形成・信頼醸成に、有効なもの」。(P.80)
- 相談において「自分の知らない新たな事象に遭遇すること」で、「これらの相談等に対する答えを導き出す過程において」税法、専門書、専門家に当たって調べることで鍛えられる。(P.80)
- また、相談内容をきちんと蓄積していけば「属人的でない組織としての知識・能力向上を図ることができ」る。(P.81)
- さらに頻出する重要な点については社内ルールとしてまとめる。
- 実際には社内各部門からの相談件数が多かったりしてつい、流れ作業的にこなしてしまうこともあるかもしれないが、一つ一つの案件に真剣に取り組むことによってこれだけ多くの学びが得られることをあらためて認識した。個人的には相談対応でビジネスの実態を知れること、事業に多少なりとも貢献ができること、から、この業務こそが税務担当としての醍醐味と感じている。
- 「企業で税務に携わる税務担当・税務部門は」「国境を越えてグローバルに事業活動を行」う「企業経営の論理」と、「領土内において…課税権も含めて統治を行う」「主権国家の論理」の「論理の違いの狭間で上手く折り合いを付けて、主権国家が定める法令等に抵触しない範囲で、経済合理性に基づい」て行動することが必要。(P.131)
- 「自身の能力を維持・向上させ専門家であり続けたいのであれば、自ら(当記事筆者注:OECD等から出される)原典にあたって読み込む努力を惜しんではなりません。」(P.172)