移転価格税制の実務研究ノート

移転価格税制の勉強の過程。実務のヒントを探しています。

会社法との関係

以下の記事で紹介した中里先生の著書にも出てきた税務と会社法との関係についての、中里先生の論文(「アグレッシブな租税回避と会社法 : Tax compliance の視点からの研究ノート」『法学新報』123巻第11-12号、2017-03-21、P.221-244)を拝読。率直に言って、理解が全く追いつかないが、メモだけ残しておく。

tpatsumoritaira.hatenablog.com

以下、本論文から抜粋(下線は当記事筆者)。

  • …本稿は、会社法の観点も加味しながら、企業による課税逃れ取引の利用に関するTax Complianceの視点の重要性について考察しようとするものである。すなわち、課税逃れ取引に対する対応について、課税とコーポレート・ガバナンスの関係という観点から、会社法的議論を取り入れて議論しようとするものである。(P.222)
  • 今や、租税法研究者も、コーポレート・ガバナンスの問題の一環としての、あるいは、場合によってはCSRの一環としての、Corporate Tax Responsibilityについて会社法の視点に立って正面から考えるべき時期がきているのではなかろうか。(P.222)
  • 会社法等の私法的措置による合法的課税逃れに対する対応は、租税法における租税回避否認や、課税庁による情報収集と同じように、課税逃れ行動を統制する手段として位置付けられるのではなかろうか…。(P.234)
  • …一方で、課税庁による調査を通じたコーポレート・ガバナンスの役割に着目し、他方で、会社法を通じたタックス・コンプライアンスの確保の強化に努めるという、租税法と会社法の相互作用こそが、健全な道なのではなかろうか。(P.236-7)

租税法の強化や透明性の向上によって企業によるアグレッシブな租税回避活動を取り締まろう、規制しようという動きや主張は多々見聞きするが、会社法からの観点については当記事にリンクを貼った中里先生の著書以外では見かけず、「会社法等の私法的措置による合法的課税逃れに対する対応」や「会社法を通じたタックス・コンプライアンス」についても、具体的に何を意味しているのか、が理解できていない。

「タックス・コンプライアンス」の意味は理解しているつもりだが、それが会社法との関係において、(あるいは会社法のなかで)どのように位置付けられるのか、なぜそれが「法令を遵守したかたちの合法的な課税逃れ」(P.222)に対する対応として有効に機能するのか、はわかっていない。

それは基本的な会社法とタックス・コンプライアンス、あるいはその上位にあるはずのコンプライアンスとの関係そのものの理解がおぼろげであるからであろう。実務からは距離があるのかもしれないが、今後の勉強テーマの一つとしたい。