移転価格税制の実務研究ノート

移転価格税制の勉強の過程。実務のヒントを探しています。

Amount B続き(Pillar One勉強用メモ⑤)

ここまでAmount Bについて、以下2回かじってみたが、実務上の疑問点に軽く触れておきたい。

tpatsumoritaira.hatenablog.com

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以下の図のような親会社Pを中心とした同一多国籍企業グループ内での商製品・ロイヤリティ取引を想定してみる。

商流①において、PはA国にある製造子会社Aから製品を購入し、D国にある販売子会社Dに転売し、子会社Dは非関連者である得意先に販売する。

一方で、商流②③においては、Pは商製品の商流には入っていない。しかし、製造子会社B、製造・販売両機能を備えた子会社Cに対してPが製造ノウハウを提供した対価として、PはB・Cからロイヤリティを受領しているとする。

このような仮想例におけるAmount B(2020年10月のブループリント:"a fixed return for certain baseline marketing and distribution activities taking place physically in a market jurisdiction, in line with the ALP"、「市場国で物理的に行われている基本的なマーケティング及び販売活動に対する、独立企業間原則に則った固定的リターン」)の適用を考えたとき、初歩的な話かもしれないが、実務上は以下のような疑問が直ちに思い浮かぶ。

  1. そもそも「固定的リターン」として想定されている売上高利益率(「ブループリント」686.)はポイント(一点)で設定されるのか(例えば、「3.0%」という形)?それともレンジ(例えば「2.0%~4.0%」)で設定されるのか?
  2. 仮に年度終了後、販売子会社Dの売上高利益率が「固定的リターン」に対して過不足があった場合(「固定的リターン」がポイントでの設定であれば、ほとんどの場合過不足は発生する)、過不足を調整する相手はグループ内の親会社Pなのか?
  3. 親会社Pが商流に入っていない商流②③のケースにおいても、上記2.の過不足を調整する相手は親会社Pなのか?
  4. 過不足分の収受は価格調整金により行うのか?それとも親会社Pと販売子会社D(あるいは製造・販売子会社C)のそれぞれの法人税申告書上の加減算でのみ対応するのか?
  5. 上記4.の手段に関わらず、関税や輸入消費税・VATとの関係はどうなるのか?
  6. 子会社Cのように製造、販売両機能を備えている場合には、販売セグメントの損益をもとに、「固定的リターン」への過不足を計算することになるのか?

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先日出た以下の報道はPillar Oneを対象にしているものと理解しているが、Amount Bも同様(Amount Aとセット)なのだろうか?Amount Bも同様に「24年以降に」なるのであれば、今から考える必要はないのか(というよりももう少し詳細がわからないと、実務に落とし込んで考えることができない)、とも思うが、Amount Aと異なり、対象になる範囲が広く、気になってしまう。

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