移転価格税制の実務研究ノート

移転価格税制の勉強の過程。実務のヒントを探しています。

「世界標準の経営理論」からの示唆③(経営学のRBVと移転価格の無形資産)

「世界標準の経営理論」(入山章栄著、ダイヤモンド社)に基づいて、移転価格税制のあれこれについて考えてみる試みの第3回。

今回は「第3章 リソース・ベースト・ビュー(RBV)」を対象とする。

要約

  • 「完全競争から、独占の方向に自社の競争環境・強みを持っていく」方法として、SCP理論が「市場でのポジショニングや業界構造を考えるのに対し」て、RBV(resource based view、「資源ベース理論」)は「製品・サービスを生み出すための経営資源(リソース)に注目する」(P.85)。
  • RBVのエッセンスをまとめると、
    「命題1ーー企業リソースに価値があり(valuable)、稀少な(rare)時、その企業は競争優位を実現する。
    命題2ーーさらにそのリソースが、模倣困難(inimitable)で、代替が難しい(non-substitutable)時、その企業は持続的な競争優位を実現する。この時リソースの模倣困難性は、蓄積経緯の独自性、因果曖昧性、社会的複雑性で特徴づけられる。」(P.74)
  •  「企業リソースの代表例は、人材、技術、知識、ブランドなど」(P.66)で、「他にも、企業の立地条件、工場施設、財務資源、サポート企業との関係、等もリソースの一種」(P.67)である。
  • 「経営理論としてのRBVには、様々な課題がある。」(P.76)
  • 例えば、「RBVは、『企業は価値があって、稀少で、他社から模倣されにくいリソースを持つべき』と言っているが、これでは具体的に何をすべきかわからない。知りたいのは、『ではリソースの価値を高めるにはどうすべきか』『リソースを模倣困難にするにはどうすべきか』といった、より踏み込んだ処方箋のはずだ」が、「RBVはこの踏み込みが弱い」(P.81)。
  • また、RBVの命題は同義反復になっている、リソースの「価値」は一義的には決まらない等の指摘もある。

 

第3章からの示唆

  1. RBVは移転価格税制における無形資産の議論を思い起こさせる。RBVで価値があり、稀少性があるとされる企業リソースとは、移転価格税制における「価値ある無形資産」に非常に近いものではないのかと感じる。
  2. OECD移転価格ガイドライン」6.10では、無形資産を保有していたとしても、それが「ユニーク」な無形資産でないと、超過利益は配分されないこととされ、この「ユニーク」な無形資産は6.17で以下の通り定義されている。
    • 「6.17 このガイドラインでは「ユニークで価値ある」無形資産に言及することがある。 「ユニークで価値ある」無形資産とは、(i)潜在的に比較可能性のある取引当事者に使用されるか、利用可能である無形資産と比較可能ではなく、かつ、(ii)事業活動(製造、役務提供、マーケティング、販売又は管理等)におけるその使用によって、その無形資産がない場合に見込まれるよりも大きな将来的な経済的便益を生み出すと見込まれる無形資産をいう。」
  3. 移転価格税制における「ユニークで価値ある無形資産」とはRBVにおける「価値があって、稀少な企業リソース」とほぼ一緒なのではないだろうか?上記OECDガイドライン6.17の定義に登場する「比較可能ではな」いという点はRBVにおける「稀少」「模倣困難性」に対応し、「大きな将来的な経済的便益を生み出す」という点はRBVにおける「価値がある」という点に対応しているように思う。違いがあるとすれば、せいぜい、移転価格税制における「ユニークで価値ある無形資産」には、無形資産の定義からは除かれる有形資産や金融資産が含まれていない一方で、RBVにおける「価値があって、稀少な企業リソース」には含まれ得ることだけだろうか。
  4. そして、移転価格税制における「ユニークで価値ある無形資産」にトートロジー感があるところも、そっくりである。(ユニークで価値ある無形資産は「将来的な経済的便益を生み出すと見込まれる無形資産」とされるが、「価値がある」と「経済的便益を生み出す」は同じではないのか。)

「経営指導の対価を収受していますか?」

森貞夫 東京国税局調査第一部国際監理官による「国際課税の動向と執行の現状」と題する講演内容をまとめたものが『租税研究』2023年8月号、P.81 -123に掲載されている。税務に関するコーポレートガバナンスから最近の国際課税の動向まで、様々な興味深いトピックが取り上げられているが、ここでは移転価格調査に関する事項として取り上げられた役務提供取引について確認しておきたい。

 

国外関連者に対する役務提供取引のケースの一つとして、「国外関連者から経営指導の役務提供の対価を収受していますか」(P.84)という質問が取り上げられている。ここで森国際監理官は以下の指摘をしている。(下線は本記事筆者。)

経営指導に係る役務提供の対価を収受していない理由として、親会社が子会社の経営を指導するのは、最終的に親会社のためであるといった説明がされることが多々ありますけれども、この場合の判断基準は、親会社である日本法人P社が国外関連者に対して行う役務提供が、株主としての活動か否かということになる…。親会社が行う株主としての法令上の権利の行使とか義務の履行は、株主として自らのために行う活動であるため、国外関連者への役務の提供には該当いたしません。(P.84-5)

そして株主活動に該当する具体的な活動については、参考事例集の事例26の解説を参照せよとのことである。

ここで事例26をあらためて確認すると株主活動に該当するとされているのは、ニ(株主総会開催のための子会社データ収集)、ホ(有価証券報告書作成のための子会社データのチェックと指導)、ト(連結財務諸表監査のための外部監査人の子会社監査同行)、チ、ヨ(投資家向け広報)及びタ(CbCR作成目的)である。チについては以下にそのまま引用する。

チ P社は、会社法に基づいて行う企業集団の業務の適正を確保するための必要な体制の整備 を図るため、S社の所在地国における現地法令の遵守状況を監査するとともに、問題点が把 握された場合にはS社に対して改善指導を行っている(S社は自らにおいても現地法令の遵 守状況の監査を行っている。)。

また、「例外的に、対価を収受しなくていい場合」として「親会社がその活動を行わなかった場合でも、国外関連者が自ら行う必要がない場合、又は第三者に同様の役務提供をしてもらった場合に対価の支払いが発生しないような場合」を挙げている(P.85)。移転価格事務運営要領3-10(1)における大原則そのままであるが、講演で取り上げている2つの事例、すなわち国外関連者に対する「取引条件交渉サポート」と「システム開発・保守」については、この「対価を収受しなくていい場合」に該当するのは「なかなかレアなケースではないかと思」うとして「対価を受けるべき役務提供に該当する可能性が高いものとして紹介」している、と説明されている(P.85)。

 

そして、本事例の前に取り上げられている、同じく役務提供取引に関する「国外関連者から製造設備の保守・点検等の対価を収受していますか」(P.84)という質問に対する回答として、森国際監理官が以下の指摘をしている点も、あわせて注意が必要であると感じた。(下線は本記事筆者。)

…調査の場面において、保守・点検サービスの対価を収受していない理由として、部品aの販売価格にそういったものが含まれているという説明を受けることがあります。そのような場合には、部品の販売価格の設定時の算定資料を提示した上で、部品aの価格が保守や点検の対価相当分を含めた合理的な価格設定となっていることを、調査の際に説明いただくこととなります…。(P.84)

つまり、概念的に棚卸取引価格に含まれているという説明だけでは駄目で、具体的に価格に含まれていることを示す必要があるということ、である。(なお、ここで取り上げられている事例では日本法人P社が国外関連者S社に対して部品a販売をするとともに、製造設備の保守・点検という役務提供を行っており、S社が部品aを使用した製品Aを第三者に製造販売しているが、仮に、製品AをP社が全量買い戻し、P社が第三者に販売する場合には、S社が製造設備の保守・点検サービスの対価をP社に支払ったとしても、S社は当該対価を製品Aの売価に乗せてP社に販売するだけのため、保守・点検サービスの対価の収受を省略する余地が出てくるものと思われる。)

 

まとめると、国外関連者に対する役務提供については、

①最終的にその役務提供が最終的に親会社のためになるという説明で対価の収受が必要不要と認められるのは、株主活動に該当するごく限られた活動のみであること。これを除いては、その対価を収受する必要があること、

②役務提供の対価の収受方法として、当該対価を棚卸取引価格に含めること自体は否定されるものではないものの、価格に含まれていることは具体的にその事実を示す必要があること、

…に注意が必要であると感じた。

そして、さらに付け加えるとするならば、企業側としては、国税が国外関連者に対する役務提供取引を移転価格調査に関連する事例の筆頭に取り上げたこと、またその取引例として製造設備の保守・点検及び経営指導を取り上げたことの意味をよく考え、これらの役務提供取引には十分に注意を払う必要があることを確認しておくべきであると考える。

「世界標準の経営理論」からの示唆②(収益性は要素還元できない)

「世界標準の経営理論」(入山章栄著、ダイヤモンド社)に基づいて、移転価格税制のあれこれについて考えてみる試みの第2回。

今回は「第2章 SCP理論をベースにした戦略フレームワーク」を対象とする。

 

要約(一部のみ)

・SCPのフレームワークの一つであるジェネリック戦略(generic strategy)では自社の競争優位を確立、維持するための基本的な戦略には大別して「『コスト主導戦略(cost leadership strategy)』と『差別化戦略(differentiation strategy)』」(P.54)がある、とされる。

 

 ・どちらを選択すべきかと言えば、「『自社の競争環境を完全競争から離し、独占に近づける戦略』」としては、「明らかに差別化戦略」が「その目的を達成しやすい」(P.55)。「…コスト主導戦略を追求すると、ライバルとの価格競争に陥りがちだ。それは競争環境を完全競争に近づけるので、基本的には望ましくない。」ただ、「コストで圧倒的に勝てる条件が揃っている時に限り、コスト主導戦略も追求する価値がある」(P.56-7)。
・これらが両立できるのかと問われれば「『それは大変難しい』というのが理論的な回答になる」。(P.57)

 

 ・企業の「収益性は産業構造だけで決まるのか」(P.59)という問いに対する経営学者の回答はばらけている。
・「マサチューセッツ工科大学の経済学者リチャード・シュマレンジー」の分析では、米国企業の「利益率のばらつきの約20%だけを説明できたが、『その20%のほぼすべてが産業属性の効果で規定される』という結果になった」(P.59)。
・一方、「カリフォルニア大学ロサンゼルス校のリチャード・ルメルト」の研究では、「企業利益率のばらつき」の「63%」が説明でき、うち産業効果はわずか2割で残りの8割は企業固有の効果という結論を得た」(P.59-60)。ポーターの共同研究では「企業収益率のばらつきの約50%を説明できて、その内訳は産業効果が4割で企業固有の効果は6割」(P.60)とされた。

 

第2章からの示唆

  1. 「コスト主導戦略」と「差別化戦略」の両立は難しいとされるが、両立できた例として、サムソン電子の半導体事業では、「新世代半導体で差別戦略を取り、旧世代半導体でコスト主導戦略を取ってきた」ことが挙げられている(P.57)。
    • 個人的な実感としては、製造業、特に大規模な設備投資を必要とする装置産業においては、この例に限らず、ある程度の収益性が維持できている企業においては、むしろ両立するのが一般的であるように感じる。
    • 差別化ゆえに採用が増えるのか、コストダウンが進むことで売価の値下げが可能になったゆえに採用が増えるのかは難しいが、私見では、ことの順番としてはまず製品の差別化があり、その差別化ゆえに採用が増えることで生産量が増え、固定費が希薄化することで、あるいは累積生産数量が他社よりも増えることの学習の加速でコスト主導が可能になる、という流れのように思う。
  2. 仮に「コスト主導戦略」と「差別化戦略」が一定、両立可能であるとした場合に、そして、製造業における、とある日系多国籍企業グループが超過利潤を獲得できている場合、その超過利潤は、グループ内のどの会社に帰属すべきなのだろうか。
    • TNMMにおいては単純機能の製造子会社は「超過利潤ゼロ」の『必要ギリギリの儲け』(前回の第1章についての記事参照)でよく、「超過利潤」は複雑な機能と重要な無形資産を抱える日本の親会社に帰属すべきとされるのであるが、「差別化戦略」の要諦を親会社が握る一方で、製造子会社が「コスト主導戦略」を可能たらしめているとするならば、移転価格(TNMM)の世界における「超過利潤の一方的な親会社集中」は理論的に正しいのであろうか。
  3. 「収益性は産業構造だけで決まるのか」という問いに対する回答として、個人的に興味深いのは、どの産業に属しているかが収益性を決定する割合そのものよりも、企業の収益性の説明要素を分解したときに、経営学者の多くがその要因の半分以上を説明できないとしている点である。
    • 世界中の経営学者が要素還元して説明できないとする企業の収益性を、なぜ移転価格税制(TNMM)の世界では単純に親会社帰属として説明してしまえるのであろうか。
    • その要素還元できない「いわく言い難い何か」をもたらしているのは、まとめて親会社にしてしまおうという割り切りなのであろうことは想像できる。
    • しかし、企業に身を置く実感としては、前線にいる製造子会社、販売子会社が、その前線で何を取捨選択するかも含め、グループ全体にもたらす「外部(市場・得意先)情報」による貢献は、ある意味でグループ全体の行く末を左右するほど大きいように思う。そして、この点において、そのような製造子会社、販売子会社を抱える各国税務当局が、単純なTNMMに納得しえないのであろう。

「世界標準の経営理論」からの示唆①(完全競争と超過利潤ゼロ)

「世界標準の経営理論」(入山章栄著、ダイヤモンド社)という800ページ超の分厚い本がある。題名の通り、移転価格税制とは全く関係のない本ではあるのだが、非常に面白く、無理を承知で、これを読み進めながら、移転価格税制のあれこれについて考えてみる、ということをやってみたい。(どこまで続くかわからないが。)

 

初回は「第1章 SCP理論」について。(以下ページ数は「世界標準の経営理論」より。)

要約

 「SCPとは”structure-conduct-performance”(構造-遂行―業績)の略称」(P.34)で、その「源流」は「経済学の産業組織論…にある」(P.34)。「SCPは『ポーターの競争戦略』の基礎になっている。」(P.34)

 

「産業ごとに収益性に大きな差がある」、つまり「『この世には儲かる産業と、儲からない産業がある』という厳然たる事実」に対して、「SCPが第1に教えてくれるのは、その理由である。」(P.35)

 

完全競争においては「企業の超過利潤がゼロになる」(P.38)。完全競争の条件とは①市場に無数の小さな企業がいて、どの企業も価格に影響を与える、②参入・撤退障壁がない、③製品・サービスが差別化されていない。一方でこの反対が「完全独占」で、①1社だけが存在して価格をコントロールし、②参入・撤退ができず、③1社しかいないので差別化がない。この場合、「企業は超過利潤を最大化できる」(P.40)。

 

どの業界も、「この完全競争と完全独占の間のどこかに必ず存在」する。 「SCPの骨子とは、『完全競争から離れている業界ほど(…独占に近い業界ほど)、安定して収益性が高い(=すなわち構造的に儲かる業界である)』ということ」(P.41-2)なので、「企業にとって重要なのは、自社の競争環境をなるべく完全競争から引き離し、独占に近づけるための手を打つこと」(P.42)。そのような「独占に近づけるための手」として「ポーターの競争戦略では差別化戦略が常に重視される」(P.46)。

 

第1章からの示唆

  1. 超過利潤は、移転価格税制においてもしばしば登場する概念であるが、ここでの超過利潤とは「企業が何とか事業を続けていける『必要ギリギリの儲け』を上回る部分」(P.38)であり、「超過利潤がゼロとは『企業が何とかギリギリやっていけるだけの利益しか上げられていない』状態」(P.38)とのこと。移転価格税制の文脈においては、「超過利潤がゼロ」とは、TNMMにおける検証対象法人となる単純機能、低リスクの製造子会社、販売子会社が獲得するべきとされる利益のこと(=routine profit)であろう。ということは、製造子会社、販売子会社は完全競争状態に置かれているということが前提になっていると考えられる。
  2. ただ、経営学で議論している完全競争状態、あるいはその対極としての完全独占状態とは、事例として挙げられているのが米国内線航空業界(完全競争/超過利潤ゼロに近い例)、米国製薬業界(完全独占/超過利潤最大に近い例)であることからもわかる通り、多国籍企業グループ全体を一つの企業としてみなした場合の、そのような企業の集合体としての産業や業界単位での状態であろう。一方で、移転価格税制における「製造子会社、販売子会社はroutine profitのみを獲得すべき。すなわち、超過利潤ゼロ=完全競争状態」とは、あくまでも多国籍企業という複数機能を有するグループにおける一部の機能のみを担当する子会社に適用している議論である。
  3. 経営学の議論を正しく適用するならば、移転価格税制においては、「産業×機能」の単位できめ細かくコンパラブルというものを抽出しないといけないはずである。例えば、製造子会社のコンパラブル抽出時の産業分類は電子機器製造、電子部品製造、食品製造等の粗い分類を使うことがほとんどであるが、これではグループ内の製造子会社の本当の意味での「産業×機能」がマッチしたコンパラブルが抽出されることはまずないだろう。工場における製造技術、生産管理、従業員教育の水準は産業によって要求される水準が千差万別であろう(自動車工場、先端半導体工場から単純な組立工場まで)し、その業界内の個別企業によっても水準はピンキリであろう。そのレベルが高い業界、企業においては、そのうちの製造機能(例えばトヨタのどこかの製造子会社)に比較し得る独立企業など存在しないだろう(ライバルとなる多国籍企業グループの製造子会社は存在するだろうが、それは独立性がないという理由でコンパラたり得ない)。「トヨタの製造子会社」を想定した場合に、完全競争(①市場に無数の小さな企業がいて、どの企業も価格に影響を与える、②参入・撤退障壁がない、③製品・サービスが差別化されていない)に置かれているとは全く思えないし、超過利潤ゼロでよいとも思えない。
  4. そこを「割り切ってしまっている」のが移転価格税制の議論であることは重々承知している。だが、だからこそ、TNMMは社内の専門家以外の人たちからは納得されない、あるいはもっと言えば、胡散臭くみられるのだろう。

移転価格事務運営要領3-10(企業グループ内における役務提供の取扱い)の再確認

当時の東京国税局調査第一部国際監理官 古川勇人氏による講演内容を取りまとめた『租税研究』2006年5月の記事、「国際課税に関する課題ー企業グループ内の役務提供に関する移転価格問題ー」(P.97‐105)を読みながら、移転価格事務運営要領 3-10(以下引用)を再確認していきたい。なお、当記事における引用個所におけるページ数は当記事のページ数を示す。

 

(企業グループ内における役務提供の取扱い)

3-10
(1) 次に掲げる経営、技術、財務又は営業上の活動その他の法人が行う活動が国外関連者に対する役務提供に該当するかどうかは、当該活動が当該国外関連者にとって経済的又は商業的価値を有するものかどうかにより判断する。具体的には、法人が当該活動を行わなかったとした場合に、国外関連者が自ら当該活動と同様の活動を行う必要があると認められるかどうか又は非関連者が他の非関連者から法人が行う活動と内容、時期、期間その他の条件が同様である活動を受けた場合に対価を支払うかどうかにより判断する。
イ 企画又は調整
ロ 予算の管理又は財務上の助言
ハ 会計、監査、税務又は法務
ニ 債権又は債務の管理又は処理
ホ 情報通信システムの運用、保守又は管理
へ キャッシュ・フロー又は支払能力の管理
ト 資金の運用又は調達
チ 利子率又は外国為替レートに係るリスク管理
リ 製造、購買、販売、物流又はマーケティングに係る支援
ヌ 雇用、教育その他の従業員の管理に関する事務
ル 広告宣伝
(注) 「法人が行う活動」には、法人が国外関連者の要請に応じて随時活動を行い得るよう定常的に当該活動に必要な人員や設備等を利用可能な状態に維持している場合が含まれることに留意する。

(2) 略

(3) 国外関連者の株主又は出資者としての地位を有する法人(以下(3)において「親会社」という。)が行う活動であって次に掲げるもの(当該活動の準備のために行われる活動を含む。)は、国外関連者に対する役務提供に該当しない。
イ 親会社が発行している株式の金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第16項(定義)に規定する金融商品取引所への上場
ロ 親会社の株主総会の開催、株式の発行その他の親会社に係る組織上の活動であって親会社がその遵守すべき法令に基づいて行うもの
ハ 親会社による金融商品取引法第24条第1項(有価証券報告書の提出)に規定する有価証券報告書の作成(親会社が有価証券報告書を作成するために親会社としての地位に基づいて行う国外関連者の会計帳簿の監査を含む。)又は親会社による連結財務諸表(措置法第66条の4の4第4項第1号に規定する連結財務諸表をいう。以下同じ。)の作成その他の親会社がその遵守すべき法令に基づいて行う書類の作成
ニ 親会社が国外関連者に係る株式又は出資の持分を取得するために行う資金調達
ホ 親会社が当該親会社の株主その他の投資家に向けて行う広報
ヘ 親会社による国別報告事項に係る記録の作成その他の親会社がその遵守すべき租税に関する法令に基づいて行う活動
ト 親会社が会社法(平成17年法律第86号)第348条第3項第4号(業務の執行)に基づいて行う企業集団の業務の適正を確保するための必要な体制の整備その他のコーポレート・ガバナンスに関する活動
チ その他親会社が専ら自らのために行う国外関連者の株主又は出資者としての活動 (注)1 例えば、親会社が国外関連者に対して行う特定の業務に係る企画、緊急時の管理若しくは技術的助言又は日々の経営に関する助言は、イからチまでに掲げる活動には該当しないことから、これらが(1)に定めるとおり当該国外関連者にとって経済的又は商業的価値を有するものである場合((2)に該当する場合を除く。2において同じ。)には、国外関連者に対する役務提供に該当する。
2 親会社が国外関連者に対する投資の保全を目的として行う活動についても、(1)に定めるとおり当該国外関連者にとって経済的又は商業的価値を有するものである場合には、国外関連者に対する役務提供に該当する。

(4) 略 
(5) 略

 

1. 「外‐外」取引の場合の注意

当記事における古川国際監理官の解説は上で引用した事務運営指針の現3-10についての解説ではなく、当時の2-10についての解説ではあるが、当時の2-10と現3-10とはその説明内容の趣旨は同じと考えられ、解説も現3-10についても当てはまるものと思われる。(下線は当記事筆者。)

(当記事筆者補足:事務運営指針の当時の2-10は)法人と国外関連者との間に契約関係がない場合であっても、このような役務提供があれば移転価格税制の対象となり、その対価についての検討が必要となることを明確化したものです。したがって、例えば、企業グループ内の棚卸資産取引が法人からみていわゆる「外ー外取引」となり、これを行う国外関連者と法人との間に契約上の取引関係がない場合であっても、国外関連者による製造活動、販売活動等に関して法人から事実上役務提供が行われていないかを考えてみる必要があります。 そのような役務提供として、製造活動に関しては、原材料の仕入れに関する支援、製造過程に関する技術的な支援、従業員の研修など、販売活動に関しては、顧客の確保、顧客との調整、広告宣伝に関する支援などが考えられます。このような役務提供については、無形資産の供与と考えられる場合もあるでしょうし、また、親会社等の機能として複数の国外関連者に対して一括して行われている場合には、いわゆるIGSとしての役務提供とも考えられます。(P.98)

買収した国外関連者などの場合には、買収後の商流が上記の通り、日本親会社を経由しない「外ー外取引」となることも多いと思う。また、買収会社であれば、もともと独立した会社として存在していたわけであり、独立会社としての必要な機能を一定備えていたはずである。

ここでの指摘は、そのような買収会社であっても、買収後、グループ内での重複機能の見直し等が買収後の時間の経過とともに進むことなどによって、日本親会社が本当に関与をしていない状態が維持されているのか、はよくよく実態を確認する必要がある、との警告と捉えた。親会社として何かしらの関与があるならば、その「関与」が、現3-10での大原則である「当該活動が当該国外関連者にとって経済的又は商業的価値を有するものかどうか」、つまりその買収した子会社にとって受益のある活動になっていないかに注意する必要がある。

 

2. 親会社の機能としての役務

次の記事からの引用はIGSについて。(下線・強調は当記事筆者。)

次に、いわゆるIGSについてお話します。指針2-10により、企業グループの親会社等の機能として行われる経営、業務、事務管理上の役務についても、移転価格税制の対象となることが明確化されました。(P.100-1)

当時の2-10、現3-10が主として親会社の機能として行われる業務を対象としている、ということについては、明確に意識することがこれまでできていなかった。むしろ、親会社の本来的な機能としての業務であれば、グループ各社に受益のある活動であったとしても、移転価格税制上の役務提供取引として認識する必要がないものと思い込んでいた。そのような理解は誤りであり、あくまでも大原則である「当該活動が当該国外関連者にとって経済的又は商業的価値を有するものかどうか」に従って判断するしかないということと認識をあらためた。

 

IGSについての説明の続きを引用する。(下線は当記事筆者。)

このような役務提供(当記事筆者注:当時の2-10で例示されている役務)も移転価格税制の対象となることについては、例えば、役務提供を行うための専門の子会社を設立し、これがグループ内の関連法人に対して役務提供を行うとすれば、その子会社は当然対価を収受することになることからも明らかだと思います。同じ役務提供を親会社の一部門が行った場合であっても、同様に対価の収受が必要となります。このように親会社等の機能として行される役務提供も移転価格税制の対象となることは、企業の皆様も既にご認識していただいていることと思います。(P.101)

ここでの「役務提供を行うための専門の子会社」とは、地域統括子会社や、シェアードサービスを専門とする子会社のことと思うが、これは非常に腑に落ちる説明である。地域統括子会社を置いていない地域のグループ会社については親会社からの「直接統治」になっているわけであるが、そのような場合には、地域統括子会社が自身の傘下会社に対して行っている場合の業務を、親会社自身が提供しているのではないか、という指摘と捉えた。あたかも地域統括会社の存在そのものが、IGSがグループ内に存在していることを顕在化させているようである。

 

3. 株主活動、按分計算

IGSについての説明の続き。現3-10(3)で「国外関連者に対する役務提供に該当しない」とされる株主活動は「非常に限定的」と強調されている。

…株主活動との区分が問題になることがあります。しかし、株主活動は非常に限定的なものだと考えています。(P.101)

OECDガイドラインも、役務提供を幅広く捉える一方、株主活動を非常に限定的に考えていることにご留意いただきたいと思います。(P.102)

 

また、共通費用の按分計算については、以下の通り説明されている(下線は当記事筆者)。合理的でありさえすれば、「それほど厳密である必要はなく簡便なものであってもよい」という指摘は、会社実務側からするとありがたい。

次に、共通費用の按分計算ですが、親会社等の機能として行う役務提供は法人自身のための業務、あるいは、国内の関係法人のための業務と同一のセクションにおいて行われることが少なくないと思います。また、複数の国外関連者に対して一体として行われることが少なくないと思います。 このような場合、国外関連者ごとに役務提供に要した費用を按分することが必要になります。…
なお、このような按分計算は合理的である必要はありますが、実務上、それほど厳密である必要はなく簡便なものであってもよいと考えています。(P.103)

 

 

今回取り上げた記事はかなり古いものであるが、「平成14年6月に指針2-10が設けられて」(P.103)3年強しか経過していない時点での当時の国税の見解は、企業実務担当者として悩みどころの多い役務提供取引を考える上で、非常に参考になるものと思う。

管理会計との悩ましい関係④(二つの取引価格)

国税庁は、2012年4 月からの「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組」の一環として行ってきた「移転価格上の税務コンプライアンスの維持・向上に向けた取組」のなかで、移転価格上の問題の発生を防止する上で有益と考える7項目を整理した「移転価格に関する取組状況確認のためのチェックシート」を公表している。

この「チェックシート」に記載された7項目の一つに、「5 移転価格算定手法を念頭に置いた取引価格設定」がある。記載要領にはこの部分について、以下の通り解説されている。(下線は当記事筆者。)

(1)社内の組織体制として、税務担当部署主導で、取引価格の設定に移転価格算定手法を用いることとしているか又は取引価格が独立企業間価格となっているかについて事業部と検討を行う体制になっていますか。

 

この解説は移転価格の「チェックシート」の中に出てくるものであることから「取引価格の設定」とは「国外関連者との取引価格の設定」と読むべきであろう。つまり、国税庁はここで「国外関連者との取引価格の設定」には、「移転価格算定手法を用いる」必要があると言っている。それは具体的に言えば、日本の移転価格税制で定められた移転価格算定手法であるCUP法、RP法、CP法、TNMM(以下略)を用いるべきであるということであり、当然であるとも言える。

そして、日本の製造業における多国籍企業グループの多くが、日本の親会社に経営上の主体的な機能を配する一方で、海外の製造子会社、販売子会社を機能・リスク限定的な位置付けにしていると思われることから、移転価格算定手法としてTNMMが最適となるケースが大勢を占めるとするならば、「国外関連者との取引価格の設定には、TNMMを用いること」と述べられていると考えても、かなりの部分、誤りではないであろう。

 

しかし、国外以外も含む、つまり国内を含むグループ内の「関連者との取引価格」は、グループ各社の管理会計や業績評価のためにも用いられる。管理会計上のグループ内取引価格の算定方法には市価法、再販売価格法、原価法があり、それぞれ移転価格算定手法におけるCUP法、RP法、CP法に対応しているものの、「TNMMに結びつく管理会計上の振替価格概念が存在しない」。(市場哲也「取引単位営業利益法の影響を受ける業績評価の適正化への示唆:管理会計の観点からの移転価格課税理論の分析」(『産研論集』49号、2022年3月20日、P75-87)のP77 図表4、及びP78。)

そのため、各社の税務部門は、税務目的からは「海外子会社の毎決算期の営業利益を、TNMMのベンチマークのもとで管理せねばならなくなっている」(市場P.80)一方で、社内の経営者や経営管理部門からは「そのような価格設定では海外子会社の管理会計が成り立たない」という批判、抵抗を受けてしまうことになる。(上記で「国外関連者との取引価格の設定」には、「移転価格算定手法を用いる」必要があると国税庁が言っていることを「当然」と書いたが、本当に「当然」なのかはよくわからない。移転価格税制という文脈では「当然」であるが、果たして各グループ企業の経営管理の機微につながるグループ内取引価格の設定方法に、口を挟むのが「当然」なのだろうか。)

このような「関連者との取引価格」が持つ二つの目的ーー税務と経営管理ーーを両立させるために、「二つの取引価格」を用いる会社もあるようだ。海外の、主として管理会計分野における論文を読むと、目的によって価格を使い分ける会社が増えているとの指摘もある一方で、全体的には「一つの取引価格」で運用している会社が多いという印象がある。

例えば、Moritz Hiemann and Stefan Reichelstein ”The Dual Role of Transfer Prices in Multinational Firms: Divisional Performance Measurement and Tax Optimization”, October 2, 2012では、”In order to address both the managerial and the tax minimization objectives of transfer pricing, some MNC’s adopt a system of ‘two sets of books’.”と指摘した上で、以下の通り続ける。(当記事筆者の仮訳)

内部的な業績評価目的で使用されるグループ内取引価格は、税務申告目的の取引価格とは「分離される」。
現時点では多くの多国籍企業は、統合的な方法、すなわち一つの取引価格で運用をしているように見受けられる。一つの取引価格で運用することの利点は、(当記事筆者補足:二つの価格を)管理するコストを削減できることと、社内で使用する報告と税目的で使用する報告との間の一貫性が維持できることにある。取引価格を一つに維持することで税務当局との争いの可能性を避けることができる。特定の取引において内部評価用の数値と、税務における数値とが異なると、当局は内部の数値を調査に利用することができる。 

 

二つの取引価格を運用することの手間、煩わしさは容易に想像できるが、一方でここで指摘されている、税務当局が社内の管理会計の数値を都合よく利用することの可能性はよくわからない。そのようなことがあり得るような気もするし、「これは管理会計であり、内部管理目的の数値である。税務や財務会計とは関係ない。」と反論できるような気もする。ただし、当局側に「きっかけ」あるいは「手がかり」を提供していることまでは否定できない。

一方で「TNMMでは、税務上適正な営業利益水準を目指して取引条件が操作された管理会計帳簿の上で、低利益の海外事業の不採算性、高利益の海外事業の高採算性が適切に表示されなくなる、という構造的問題がある」(市場P.81)なかで、TNMMを遵守するグループ内取引価格を続けることが本質的にグループ全体の採算意識、特に製造業では工場におけるコストダウン・改善意識を損なっていないのか、仮に損なっているならば税務コンプライアンスは達成できたかもしれないが、企業としては事業を継続できなくなってしまい本末転倒である。税務に限らずコンプライアンスは企業が存続するための前提条件なので、これを遵守するなかで工夫を凝らして競争力が維持できる仕組みを作るしかないことは重々承知だが、悩ましい問題である・・・。

 

 

管理会計との悩ましい関係③

管理会計と移転価格の関係を考える3回目。以下の論文をもとに考えてみた。

 

市場哲也「取引単位営業利益法の影響を受ける業績評価の適正化への示唆:管理会計の観点からの移転価格課税理論の分析」『産研論集』49号、2022年3月20日、P75-87

 

利益獲得の機会を地理的に特定し、適時に、適切な規模の投資を行うことは、多国籍企業の事業戦略の要諦であり、そのために適正な業績評価が担う役割は大きいといえる。(P.76)

取引法(当記事筆者注:CUP/RP/CP)…においては、移転価格税制の上で適正な取引条件(取引価格自体または粗利幅)として検証された営業取引が集積(プロセス)され、アウトプットとして適正な営業利益…が誘導的に導出される。これに対して…TNMM…においては、アウトプットである海外子会社の利益の高低に対して検証が行われ、これがTNMMレンジ内の適正な水準に帰着するよう、プロセスである期中取引の価格が修正される、という帰納的な構造にある。このことによりTNMMでは、税務上適正な営業利益水準を目指して取引条件が操作された管理会計帳簿の上で、低利益の海外事業の不採算性、高利益の海外事業の高採算性が適切に表示されなくなる、という構造的問題がある…。(P.81)

移転価格税制が取引法のみに基づいて適用されるのであれば、グループ内における振替価格のルールを、取引法のルールに準じたものとすることで管理会計の運用を行うことができる。ある意味、管理会計における振替価格は、一定のルールに基づいて設定され、それが予算と実績において、また、年度をまたがって、一貫性を持って設定されてさえいれば、それがどのようなルールであったとしても、実務上「使える」。だから、その振替価格のルールが移転価格税制(CUP/RP/CP)に基づくものであってもよい。

しかし、その価格が海外子会社の営業利益水準の年度見通しに応じて期中で修正されてしまうのであれば、その振替価格は管理会計には「使えない」。

 

…TNMMの影響を受けた海外子会社の利益水準に依拠した業績評価に代わって、「TNMMの取引単位を基準とする連結セグメント会計」が、一つの答えを提供することとなる。(P.85)

海外子会社の利益のみではなく、当該海外事業を支えた親会社の期間純損益を連結した、TNMMが機能する取引単位に則した連結セグメント会計上の財務数値が、移転価格税制の影響を受けながら、海外事業の業績評価をより適正なものに近づけると期待される。(P.85)

確かに連結ベースの事業別損益は、グループ内取引が相殺されているので移転価格税制の影響を受けず、業績評価に用いることができる。

ただ、実務観点で言えば、これはすでに事業会社各社は行っている。連結損益で事業を評価するニーズはもちろんあるし、そのために連結損益は作成しているが、その上でなお、「海外製造子会社単体の(移転価格税制に邪魔されない)損益」も見たいのである。なぜなら、連結ベースの事業の損益は事業の評価にはなるものの、販売機能や本社機能等、海外製造子会社自身の貢献以外の要素も入り込んでおり(かつ往々にしてそれらは配賦基準に大きく左右される)、工場単体での評価にはならないためである。工場そのものの予算と実績、あるいは過年度実績との比較を通じて、各種改善活動、コストダウン活動、納期対応、在庫管理等、工場機能の総合的な評価を示す工場単体損益が必要とされる。

ただ、グループ内の業績評価のニーズそのもの、つまりグループ内関係者の認識を変えてもらうことは可能かもしれない。工場損益管理の場面においても連結ベースの損益、つまり、売上高は工場の売上価格ではなくグループにとっての外部得意先向け売上価格ベースとなっており、かつ、販社・本社の費用も入ったベースの損益を使用してもらう。その方がグループ内の事業関係者たちの連結経営マインドを醸成する上で結果的にはよいのかもしれない。(なお、実際の事業は、単一の海外製造子会社と、単一の販売子会社、単一の本社部門から成り立っていないケースがほとんどで、「連結ベースの損益」と言っても、ある特定の海外製造子会社にとっては自らの責任範囲外の要素が多くなってしまうことへの工夫が要りそうである。)

 

連結損益の活用の他に、TNMMと管理会計の折り合いをつける方法として考えられるのは以下のような運用になるだろうか。

  • 上記「期中取引の価格」「修正」(P.81)影響を、調整対象となった海外製造子会社の管理会計損益上取り除く。
  • 実際の取引に使用される振替価格とは別に管理会計用の価格を用意しておき、工場での管理会計損益の売上高は、管理会計用価格に基づいて計算し、実際の振替価格ベースの売上高から置き換えて使用する。

すでに行っている連結ベースの事業別損益を除けば、いずれも面倒な方法である。しかし、移転価格税制の大勢がTNMMとなってしまった以上、管理会計は何とか折り合いをつけなければならない。「…法人税制、特に移転価格税制と管理会計の関係性の問題は、国内外で古くから盛んに取り組まれてきた研究課題」(P.76)とのことであり、勉強を続けたい。