移転価格税制の実務研究ノート

移転価格税制の勉強の過程。実務のヒントを探しています。

機能と関数

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移転価格とは全く関係のない分野の本からの脱線です。

中谷礼仁「近代建築史講義」(インプレスト)より、建築の世界におけるモダニズム、そして機能主義が説明されている部分からの抜粋(P.176)。

機能主義はモダニズムの中心的思想のひとつであり、その解釈にはやや幅があります。私が推薦する理解の仕方は「機能(function)」を「関数(function)」と同義とみることです。関数とは2つの変数xとyがあり、入力xに対して、出力yの値を決定する規則fのことです。つまり、これは問題xと解決yとがfという関係規則によって決定されている(y=f(x))ということですから、問題と解決は一対一対応になります。

この対応関係を信じようとする思想やそれによって生まれたデザインを機能主義と呼びます。しかし問題と解決は、現実的にはそう簡単に一対一対応になるとは思えません。

TNMMも同様の思想に基づくのではないか。

 

あるグループ会社が担当する「機能(製造や販売等)」(x)に対する「答え」(y)ーーここでは利益率ということになるがーーは一定であるということ、一定になるような法則(f)が存在するということ。

TNMMはこのような考え方を前提としているが、人が行う、それも多くの人が関与する企業活動は科学ではない。あるグループ会社が担当する機能、そこの社員が実際に行うことが他社と全く同じになることはないし、時間の経過とともに、そこの社員が担う機能も変わってくるだろう。

つまり、同じ「入力」は存在しないし、出力yを左右するのは「機能」だけではなく、あらゆる内外環境が影響する。普遍的な法則(f)は存在しない。そして、結果としての出力=利益率も千差万別であるはずである。

だから、TNMMはあたかも科学であるかのように装うのはやめて、割り切って、グループ内の利益配分は配賦により決めてしまうか、グループ会社には固定した利益率を適用するようにしてしまうか、ではないか。