移転価格税制の実務研究ノート

移転価格税制の勉強の過程。実務のヒントを探しています。

穴を掘って、穴を埋める

当ブログを始めるに当たって、最初の記事として以下の記事を書いた。

tpatsumoritaira.hatenablog.com

要は当ブログは移転価格の専門書を自分で読み、それらを紹介する場として考えていたということで、しばらくはそのような趣旨に則った記事が多かった。しかし、最近は少し趣向が変わり、専門書だけでなく、論文や雑誌記事も参照させて頂いたり、また、実務で生じた疑問点を自分なりに調べた、他人にとってはごく当たり前の内容の記録だったり、というものが多くなってきた。

 

移転価格や税務とは全く関係のない本であるが、いま読んでいる吉川浩満「理不尽な進化 増補新版 ――遺伝子と運のあいだ 」(ちくま文庫) の「あとがき」で、吉川さんはご自身の本の書き方について、以下のように書かれている。

私は自分で堀った穴を自分で埋めるようなやり方で本を書くのだ。初めに躓きがある。原因を探るために地面を掘り返すのだが、土を掘り返したところでそれが見つかるわけではない。躓いたのは地表においてなのだから。そこで今度は掘り返した土を埋め戻すことになる。新たな目標は、もはや躓く余地がないほど地面を平坦にすることだ。その埋め戻し分が書き物になるという次第なのである。

当然ながら埋め戻す土は掘り返した土と同量なわけだから、地面の上になにかが積み上げられることはない。つまり誰の糧になるわけでもない。(P.438)

このブログで行っていることも同じである、と勝手に思っている(自分の「掘り返し方」はお話にならないほど浅く、大変恐れ多いが)。

自分が実務を行う上で、直面したことの中で、引っかかったこと、疑問に思ったこと、もう少し考えてみたいと感じたことを取り上げて、調べたり、専門書や論文を読んで考えたことを、ちょこちょこメモしているだけで、何か世の中にとって新しいことを「積み上げ」ているわけではまったくない。

単に、わからないことを放置しているのが気持ち悪く、それを少しでも解消できる、わかった気になれると気持ちがいい、楽しいと思えるから書いている、と今は思っている。