移転価格税制の実務研究ノート

移転価格税制の勉強の過程。実務のヒントを探しています。

PE勉強の続き①

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以前に「PE勉強の手始めに」と題した記事を書いたが、今回はその続きというか、より体系的にPE課税の勉強をする必要に迫られ、そもそもPEとは何なのか、という初歩の初歩を仲谷栄一郎・井上康一・梅辻雅春・藍原滋共著「国際取引と海外進出の税務」税務研究会出版局を教科書として勉強した。

 

この本にはこれまで「難しそう」という漠然としたイメージを抱いており、入手した後もあまり手に取ることはなかったが、説明の中で具体的な税法条文がすべて提示され、かつ、論理立てて説明されているので、今回の勉強では自分でもその条文の一つ一つに実際にあたりながら、本書を読み進めて行くと、相当理解が進んだ(ような気がする)。

 

以下は第2編「第1章 恒久的施設とは」(P.392~408)を読みながら、国内税法での定義と、日米租税条約の定めを対比させながら、かつ相当程度端折りながら、自分の理解のためにまとめたもの。(本記事に限らずであるが、記述に誤りがある場合はすべて自分の理解不足によるものなので、本書そのもの、あるいは該当条文にあたって頂きたい。)

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なお、上記法人税法第2条第1項第12号の19に定められている、租税条約が優先する旨の規定は以下の通り。(下線部分。下線は筆者。)

十二の十九 恒久的施設 次に掲げるものをいう。ただし、我が国が締結した所得に対する租税に関する二重課税の回避又は脱税の防止のための条約において次に掲げるものと異なる定めがある場合には、その条約の適用を受ける外国法人については、その条約において恒久的施設と定められたもの(国内にあるものに限る。)とする。
イ 外国法人の国内にある支店、工場その他事業を行う一定の場所で政令で定めるもの
ロ 外国法人の国内にある建設若しくは据付けの工事又はこれらの指揮監督の役務の提供を行う場所その他これに準ずるものとして政令で定めるもの
ハ 外国法人が国内に置く自己のために契約を締結する権限のある者その他これに準ずる者で政令で定めるもの

 

「日米租税条約以外の租税条約が定める恒久的施設の基本的な枠組みもおおむね国内税法で定めるもの、あるいは日米租税条約で定めるものに重なるものとなっていますが、細かく見ていくと、租税条約ごとに若干の違いがみられます。」(P.406)とのことなので、これをベースに、あとは実務の具体的な場面で、対象相手国ごとの租税条約にきちんとあたっていけばいい(その手間を惜しんではいけない)ものと理解した。それと、実際には事実認定の部分、及び、課税当局の実際の執行姿勢の把握も必要と考えているが、これらには経験の積み重ねが必要と感じており、一つ一つの実務の場面に真摯に対応していきたい。